キングス・ワールドカップ・ネーションズ2025を終えて。【Murash FC監督:中井健介】

こんにちは、中井健介です。

僕は22歳までサッカーをし、大学を卒業してからフットサルを始めました。

22歳で初めて競技フットサルに触れた自分は身体能力はあったけれど、フットサルの戦術は全く知らず『お前とプレーすると無茶苦茶になるんだよ。』と愚痴を溢されるほど、考えてプレーしていませんでした。この言葉に”衝撃”を受け心を痛めたのを今でも覚えています。

そんな時期から13年が経ち、フットサルを学び『考えるプレー』を実践する僕が新たに挑戦したステージが、

『キングス・ワールドカップ・ネーションズ2025の日本代表監督』

プレイヤーではなく、監督としてのオファーをいただいたのです。

今回はキングス・ワールドカップ・ネーションズ2025の振り返りや裏話など総括をしていきたいと思います。

目次

キングス・リーグとは

まずはキングス・リーグがよくわからないという方に向けて、キングスリーグについて簡単に説明します。

キングス・リーグは、元スペイン代表のジェラール・ピケ氏が会長を務める7人制サッカーのリーグ戦で、2022年11月にスペインで発足しました。このリーグは、元プロサッカー選手や人気ストリーマーがチームオーナーとして参加し、12チームによる総当たり戦とプレーオフで構成されています。

キングス・リーグの特徴は、独自のルールやエンターテインメント性の高さにあります。主なルールは以下の通りです。

キングス・リーグでは多数の独自ルールが採用されており、SNS上の投票によって決まった。7人制のサッカーで、試合は20分ハーフ。タイブレークPK戦、無制限の交代、イエローカードで2分間の退場、レッドカードで交代要員が入るまで5分間の退場などが採用されている。

型破りなルールのひとつが、《即PK獲得》《1分間得点が2倍》《相手のカードを奪う》《相手選手を2分間退場させる》《ジョーカー(いずれかの効果を発揮)》の5種類から1枚のカードをランダムで使用できるというものだ。※エンターテイメント性重視の大会のため、状況に応じたルール変更の可能性あり

出典:【ルール】キングス・ワールドカップとは? 加藤純一が参戦 | Goal.com 日本

このキングス・リーグの国際大会として「キングス・ワールドカップ」が開催されており、日本からはゲーム実況者の加藤純一さんがムMURASH FCというチームを率いて参加しています。

キングス・ワールドカップ・ネーションズ2025が今年の1月に開催され、その監督として僕が選出されたということになります。

どのように監督としてのオファーが来たのか。

11月末のある日。

ソサイチ連盟の方から連絡をいただき、

「KINGSの監督をしないか」

と直球の連絡でした。

その方は運営の方ではないので詳しいことは知っておらず「今日中に決めてほしいとのこと」でとても驚いたのを覚えています。

その時に伝えられたのは遠征の日程と条件のみで、メンバーやどんなチームを作っていくのかの方向性などは全く分からない状態でした。

なんかこれも僕の人生らしいなと。

難しいチャレンジになることは覚悟の上であらためてご連絡させていただき、参加の意思を伝えました。

【国内練習】どんなチームを作ろうとしたのか。

12月に入りライングループが作られ、その時に初めてメンバーを知りました。12月の2週目に全体ミーティングを行い、練習回数は4回。

しかも全員が揃う日は1度もない中でのチーム作り。ワクワクしますね。

ミーティングで僕が伝えたことは『サッカーの日本代表のようなワクワクするチームにする。』もちろん僕の活動のテーマである「考えてプレー」することは要求します。

ハードワーク」、「一体感

日本代表として戦うにあたり世界でも通用するこの二つを軸に、攻撃的なサッカーをして勝つ。

そのように共通認識を持たせるミーティングにしました。

国内練習では、まずはチームDFの共通認識を持たせることと引いた相手に対してのオフェンス「3オンライン」をトレーニングマッチの中で落とし込みに行きました。

なぜなら前回大会を見ているとほとんどのチームが引いて守ることが多かったから。

そんな中、選手の中には引いて守ることに対して不満を持つシーンもありましたが、強豪国に対して大敗をしてしまっては絶対にいけないと思いましたし、ゲームを作っていくためには必要不可欠。

そういった部分もストレスを持つ選手には直接伝え急増チームながら良いコミュニケーションが取れたと思っています。

【イタリアに到着】最終調整の練習とミーティング

イタリアの宿舎に到着し、すぐにジムへ行きチームトレーニングを行いました。

移動の疲れを流し、そして全員が揃うタイミングでもあったのでコミュニケーションをとるためです。

残りは2日。練習とミーティングはそれぞれ2回ずつ。初戦の相手は開催国イタリアで、しかも大会の開幕戦という大舞台に向けてはあまりにも準備不足でした。

でも、逆にここで日本がイタリアに勝つことは大番狂わせ。

開幕戦で日本を知らしめる絶好の機会でもありました。

そして初めて全員が揃ってのボール練習。引いて守るDFを徹底的に確認しました。合流メンバーと合わないシーンもありましたが、スタメン組は理解している感覚があり、現段階での最高の準備ができました。

開幕イタリア戦について。

日付試合結果
1/2(木)日本 3-1 イタリア

ホテルで会うイタリア代表は自身に満ち溢れ、他のチームもイタリアが勝つだろうと思っていたことでしょう。

そんな雰囲気を感じながら会場キックオフ1時間前に入り。そこからは嵐のように時間が過ぎていきます。

すぐにピッチへ行きウォーミングアップスタート。

練習会場とは全く違うエンタメの空間に選手・スタッフ全員が興奮。

『やってやろう』と一つになっていました。具体的なプレーは映像を見てほしいのですが、ここでは、試合の中でのポイントを書きます。

①引いたDFの完成度が高いこと。(これは自分たちにとっては大きな自信となりました。)
②オフェンスがロングボールとシュンスケのボール保持との2種類を使い分け、両ウイングが躍動する。
③ルールの活用。カードの使うタイミングが上手くいった。

これらの要素からイタリアに勝利。素晴らしいハードワークでした。

改善できた部分としては、オフェンスでやってきたことができず即興になってしまったことです。

アルゼンチン戦について。

日付試合結果
1/4(土)日本 1-2 アルゼンチン

中1日で挑むアルゼンチン戦。

この試合に勝てば5日の休みができる中でメンバーの疲労を考えるとなんとしても勝ちたい試合。

スカウティングの印象は『不気味』です。身体が全員大きいわけでもなく、決まった動きをしっかりやってくるわけでもない、掴みにくいチーム。

そんな中で少しの時間で僕が修正を加えたいと思ったのがオフェンス戦術3オンライン。

ミーティングでも詳しく解説し伝えていきましたが、、、いざ試合に入っていくとなかなか上手くいかなかった。

この試合はイタリア戦で活躍した右ウイングのリョウヘイがレッドカードにより出場停止。

シュンスケが怪我がよくなりつつある。という中で、そこのメンバーの変化の中で挑む。

この試合でのポイントは以下の通りです。

①引いたDFの穴を狙われた。
1失点目のファーからのランニングはイタリア戦から相手がスカウティングしてきたものでしょう。僕は選手たちに注意喚起できず、最初に狙われて失点しました。

②3オンラインが機能しなかった。
相手は前から来る時もあれば、少し下がった位置から守る時もあれば使い分けてくる中で、自分たちは効果的に相手をずらす場面を主導権をもって作ることができなかった。

③得点力不足。
前半で言うとエンケンのシュートアウトとシュンスケの1vs1。後半で言うとアガタの落としからタカハルのシュート。2倍ゴールの時間も長がったので一点でも決まっていれば大きく変わる中で決めきれなかった。

モロッコ戦について。

日付試合結果
1/7(火)日本 2-4 モロッコ

中2日が空いてのモロッコ戦。

テーマはオフェンシブ。

3オンラインはもちろんのこと、相手が前から来るなら選手たちが流動的に動くクアトロをこの期間でチャレンジしました。

スタメン組は疲労が溜まっているので1日は休養に使い、たったの1日での落とし込みになり簡単ではないのは承知の上ですが、この試合だけでも成長し続けるためにチャレンジ。

モロッコをスカウティングしてのイメージはアルゼンチンより統率があり、フィジカルも全体的に高い。隙が少ないチーム。

この試合を振り返ってのポイントは

①サブメンバーがアルゼンチン戦と同じ狙われ方で失点。
逆サイドの裏を攻略されて失点したシーン。ここは自分がもっと注意喚起しなければいけなかった。オフェンスにフォーカスを当てたミーティングの中でも同じミスは繰り返してはいけないのにも関わらず狙われて失点。

②相手のDFが前プレでもなく引いてもない。
失点が早い時間帯にあり常にビハインドで相手は余裕を持ってDFをしてきていた。こちらが仕掛けようとすると距離を取り、不安定な時にはリスクをかけて奪いに来る。相手のペースの時間帯が多かった。

③クアトロが機能していた。
クアトロはこの試合から導入したもので、ぶっつけ本番でできるかの不安はありました。

YouTubeのコメントでは「何が秘策なんだ?」とありましたが、僕としては、クアトロをしている時間帯は相手も嫌がってディフェンスをしていたし、日本代表の選手たちも流動的に動けていました。(下記動画の37:05あたり)

試合の結果は2-4で敗戦。今大会の敗退が決まった瞬間でした。

総括

『監督としてチャレンジができなかった。』

正直、依頼を受けたあと、前回大会を見れば見るほど、「今大会はよりレベルが上がっているだろうし、賞金も大きいのでいろんなチームが準備して挑んでくるだろう。だから2試合で大敗して日本に帰ってくることもあり得るだろうな」と考えていました。ただ、「その中で狙い目はあるし、勝てるチャンスがあるぞ。」とも思っていました。

だからこそDFを作り上げ、固い試合がまずはできるようにチャレンジし、選手たちは素晴らしい取り組みで守ってくれました。

3試合終了時点で敗退した国と比べても失点数が少ないのは明らかですし、優勝したブラジルをみても3試合の総失点で見ると8失点なので日本よりも失点しています。この数字を見ても選手たちはしっかりと取り組んでくれました。

3試合終了時点での総失点

スペイン

12失点

ドイツ

17失点

ペルー

12失点

ブラジル

8失点

日本

7失点

逆にいえば、オフェンス力が足りないことも結果として明らかになりました。

『監督としてチャレンジができなかった。』僕はオフェンスが大好きです。それは選手たちも応援して見てくれていた方々も同じだと思います。攻撃的なサッカー。

ゴール前に行くだけでなく、ゴールを決めること。選手たちの個性がある中で、僕は制限をかけていた。

それは失点を嫌ったからこそ。交代選手含め、リスクをかけもう一つ、二つと前にラインを上げていれば、決定力も上がってたと思う。

実際問題、今大会の総得点6点でその内プレジデントPK加藤さんのゴールが2。GKケイスケのゴールが1。監督としての課題が見えた部分でした。

最後になりますが、監督としてこの大会に関わることができ、感謝しかありません。チャレンジをして良かった。まだまだな部分が大きいですが、さらに成長していきます。応援してくださった皆さん、衛門の皆さん、ありがとうございました。オーナーの加藤さんやスタッフさん、チームのメンバー、GOD、ゴウもありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

中井健介

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この記事を書いた人

小学4年生でサッカーを始め、滝川第二高校サッカー部を経て、専修大学体育会サッカー部に入部。1年時にレギュラーポジションを獲得すると、関東大学サッカーリーグ戦などで活躍。
大学3年時に日本フットサルリーグ所属のペスカドーラ町田のセレクションを受け、大学卒業後の2012年にチームに加入。2016年、全日本フットサル選手権優勝。2017年、日本代表に招集。
2019年、自らが選手兼監督を務めるFC NAKAIを立ち上げると、YouTube番組「目指せ!Fの頂」が総再生回数400万を超える。
2020年にはSAS INTERNATIONAL CUPに招待され、地元マレーシアのパハン・レンジャーズを撃破し3位となる。

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